普段はエンジニアとして、そして管理職として、日々「伝える」ことの重要性を痛感しています。
この記事でお話ししたいのは、「伝わらなければ、存在しない」という厳しい現実です。
どれだけ優れた技術を持っていても。
どれだけ危険を察知していても。
どれだけ熱量を込めて資料を作っても。
相手に伝わらなければ、それは「ないもの」と同じ。
私はこれを何度も目の当たりにしてきました。だからこそ、この記事を読んでいるあなたに「伝える力」の本質を届けたいのです。
技術は“課題解決のストーリー”に翻訳してこそ伝わる
「うちの会社には技術力がある」
多くの会社が胸を張ってこう言います。
でも、その言葉だけで顧客が心を動かされることはあるでしょうか?
技術だけを語っても響かない理由
プレゼンの場で、専門用語を並べ立てても相手は首をかしげます。
なぜなら 「その技術が自分の課題をどう解決してくれるのか」 が見えないからです。
技術の素晴らしさを説明することと、顧客に価値を届けることはイコールではありません。
翻訳者になることが管理職の役割
技術者はしばしば「作ること」に没頭しがちです。
だからこそ、マネジメント層や営業担当が「翻訳者」として存在する必要があります。
顧客が知りたいのは、技術の仕組みではなく「未来の自分にどんな変化があるか」。
ここを翻訳できる人材こそ、組織にとって欠かせない存在です。
ヒヤリハットは「共有」されてこそ安全につながる
この“伝える力”の話は、ヒヤリハット活動にもそのまま当てはまります。
報告されないヒヤリは“存在しない”のと同じ
現場で「危なかった」と感じた瞬間があっても、それを胸の内にしまい込んでしまえば、組織の安全性は1ミリも高まりません。
小さな違和感や軽視された兆候が、やがて大きな事故へと発展することを、私たちは知っているはずです。
にもかかわらず、「大ごとじゃないから」「面倒だから」と伝えない人は少なくありません。
伝えることは“自己防衛”になる
私は部下にいつもこう伝えています。
**「ヒヤリを伝えることは、自分を守る最強の行動だ」**と。
事故が起きてしまえば、責任を問われるのは自分自身です。
だからこそ、違和感を言語化して報告することが、自分の未来を守ることにつながるのです。
ヒヤリハットの報告は「会社のため」でもあり、「仲間のため」でもあり、最終的には「自分のため」。
その意識を持つだけで、報告へのハードルはぐっと下がります。
プレゼンも報告も“共感”で伝わる
プレゼンや報告の場面で共通するのは、**「共感がなければ人は動かない」**ということです。
共感を示すことが最強の武器
人は論理だけで動くわけではありません。
「この人は自分の気持ちをわかってくれている」と感じたとき、初めて耳を傾け、行動を起こします。
プレゼンであれば、顧客の不安や悩みに寄り添うこと。
ヒヤリハット報告であれば、「不安に感じた」という感情を代弁すること。
共感は、伝える力の根幹にあるものです。
技術を“感情”で動かす
たとえばAIの導入を提案する際、
「処理速度が2倍になります」と説明しても、ピンとこない人は多いでしょう。
でも、
「今まで徹夜していた作業が、定時で帰れるようになります」
と伝えれば、途端に感情が動きます。
数値よりも、「自分ごと」に落とし込む表現こそが、伝える力の真髄なのです。
「伝わってこそ、価値になる」という真実
ここまでお話ししてきたように、技術・ヒヤリハット・プレゼンに共通するのはただひとつ。
「伝える力があるかどうか」です。
伝わることで価値が生まれる
- 技術は、価値に翻訳してこそ伝わる
- ヒヤリハットは、共有されてこそ意味を持つ
- プレゼンは、課題に響いてこそ評価される
どれほど優れた知識・技術・気づきであっても、伝わらなければ存在しないのと同じ。
だからこそ、私たちは「伝える力」を磨き続けなければならないのです。
伝える力は“キャリアの武器”になる
伝える力を鍛えることは、単なる仕事のスキルアップにとどまりません。
人間関係、キャリア形成、リーダーシップ──すべてに直結する「生きる力」なのです。
まとめ:あなたに届けたいメッセージ
最後に、この記事で伝えたかったことを整理します。
- 「技術力がある」だけでは伝わらない
- 顧客・部下に“価値を翻訳して伝える力”が必要
- ヒヤリハットも報告されてこそ意味がある
- 伝えることは、最終的に“自分を守る力”になる
- 管理職の役目は、「翻訳者」になること
私たちは往々にして「知っている」ことに安心してしまいます。
けれども、本当に意味を持つのは「伝えている」ことです。
知識は伝わって初めて価値になる。
経験は共有されて初めて安全につながる。
技術は翻訳されて初めて相手を動かす。
どれだけ優れたスキルを持っていても、心の中にしまっておくだけでは誰の役にも立ちません。
逆に、完璧ではない知識や小さな気づきでも、それを伝えることで誰かの人生を救うことがあります。
たとえば――
部下の何気ないヒヤリハット報告が、重大事故を防ぐきっかけになるかもしれません。
小さな改善アイデアが、チーム全体の生産性を底上げするかもしれません。
自分の経験談を語ることで、後輩が安心して挑戦できるようになるかもしれません。
つまり「伝える力」は、あなた自身だけでなく、周囲の人をも守り、未来を切り開く力なのです。
管理職にとってはもちろん、現場で働く一人ひとりにとっても、伝える力はキャリアを支える武器になります。
そして、その力を磨くことは、仕事だけでなく人生そのものを豊かにしていく行為です。
伝わらなければ、存在しない。
だからこそ、今日から意識してみてください。
小さなヒヤリを仲間に伝えること。
自分の技術を「誰かの役に立つストーリー」に置き換えて話すこと。
顧客の課題に共感しながらプレゼンをすること。
その積み重ねが、あなたの信頼を築き、組織を強くし、未来の自分を守ります。
この記事が、あなたが「伝える力」を磨く第一歩になることを願っています。
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